春は花、夏ホトトギス、秋は月、冬雪冴えて冷しかりけり
道元禅師
万葉集に詠われる、日本の四季の美しさと日本人の感じる自然への思いを表した美しい調べをどなたでも一度は見聞したことがあるのではないでしょうか。
ところで、「ホトトギス」とはいったいどんな野鳥なのでしょう?
ホトトギスはカッコウ目カッコウ科に属しているため、カッコウによく似ています。実は他にもツツドリというカッコウの仲間がいるのですが、カッコウ、ツツドリ、ホトトギスを外観で見分けるのは非常に困難です。これらの野鳥を見かけたら、鳴き声で判断するのが一番確実です。それぞれの鳴き声を比較してみます。
カッコウの鳴き声は、皆さんよくご存知の「カッコー」です。よく、横断歩道の音に使われています。
ツツドリの鳴き声は「ポポっ ポポっ ポポっ ・・・」です。
ホトトギスの鳴き声は、「キョキョっ キョキョキョキョ」です。ホトトギスの聞きなし (*1) は、「特許許可局」です。ホントにそんな風に鳴くのかなと思う事なかれ、ホトトギスの鳴き声を聞いた後には、たしかに「特許許可局」と聞こえます(先人の感性の鋭さに脱帽)。
ホトトギスは卵をウグイスなどの巣に産み、子育てを自分ではせず、他の種にまかせてしまいます。この習性を「託卵(たくらん)」と呼びますが、姿の似ているカッコウやツツドリも同じ習性を持っています。
ホトトギスの託卵はたいへん巧妙です。多くの観察記録から、託卵を成功させるための工夫を挙げてみます。
まず、オスは託卵相手の気を引く手助けをして、ウグイスなどの託卵相手を巣外に誘い出します。託卵相手が巣を離れた一瞬を狙ってメスはすぐに卵を産みます。産まれた卵はウグイスの卵に、大きさも色もそっくり。卵を産んだ後は巣に元からあった卵を一つくわえて巣外に持ち出します。さらに、ホトトギスのヒナは、託卵相手の種よりも少し早く卵から孵ります。生まれたばかりで、まだ目を開けていないうちから他の卵を背中に乗せ、頭を中心にして時計のようにぐるぐる回る運動をします。この運動により他の卵を巣外に放り出してしまうのです。なんと、背中には卵を乗せやすいように僅かなくぼみもあるそうです。DNA に刻まれた本能とはいえ、なんとも巧妙な自然の摂理に感動すら覚えてしまいます。
自分では巣も作らずに、子育てもしない と聞くと、ずいぶん無責任に聞こえますが、いざ託卵してみようとすると、これがなかなか難しいことだと気づきます。
まず、タイミングの問題です。自身が卵を産もうと思っても、周りに託卵の対象となる種がちょうど抱卵中でなければなりません。タイミングよく卵を産むためには、事前に複数の巣を候補としておき、巣の出来具合や抱卵開始時期などを把握しておく必要があるでしょう。
次に、抱卵中の野鳥はたいへん敏感ですから、他の種が近づけば、大いに警戒します。不容易に近づいてしまうと、場合によっては巣を放棄してしまうことも考えられます。そうはならないように、オスと連携したりして、親鳥がちょっと巣を離れた僅かな隙に自分の卵を産まなければなりません。
さらに、託卵相手の卵と自分の卵は、大きさ、色が似ていないとすぐに見破られてしまいます。
このように、託卵はたいへん難しいことなのです。
託卵されてしまったウグイスは、せっせとホトトギスのヒナにエサを運びます。野鳥図鑑には、ウグイスよりもずいぶん大きくなったホトトギスのヒナがエサを貰っている写真をよく見かけます。ウグイスは疑うこと無くホトトギスのヒナを自分のヒナと思ってエサを運ぶのです(けなげ・・・)。
では、どうして託卵という習性があるのでしょう。
鳥類は皆、卵を体外に生み育てます。理由は、卵を体内に抱えていると、飛ぶことに支障があるためです。また、子育て中は行動範囲が狭まってしまい、自身の生命へのリスクも高まります。結局、『自由に空を飛び回ることができる』という、鳥類特有の利点を最大限に活かしたい、その結果、託卵という選択をしたのではないか と考えられます。
「ホトトギスの鳴き声で夏の到来を感じる」
万葉の時代から続く私たちの感性と、夏になればホトトギスの鳴き声が聞けるような自然環境がいつまでも続くことを願いたいものです。
(*1) 聞きなし とは、鳥の鳴き声を意味のある日本語に置換えたもの
| 和 名 |
杜鵑(ホトトギス) |
| 学 名 |
Cuculus poliocephalus, L28cm |
| 撮 影 日 |
2003/9/15 (F2.8, 1/60) |
| 撮影場所 |
都立水元公園 |
| タイトル |
Boring... (Photo: Moz) |
| カ メ ラ |
Nikon E995 with Vixen Geoma 65A × 15 |