2009年度大学院生支援プログラムより(3)|『大学院生調査研究レポート』

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2010.05.14|2009年度 |

2009年度大学院生支援プログラムより(3)

「カテゴリー特性に基づいた、メディア選択の基礎研究」その動機と目的

自動車や電気機器等、これまでの日本経済を牽引してきた企業間における製品の機能や品質上の格差は益々縮まっています。
現在では、製造業においても、従来型の製品購入段階に特化したマーケティングに注力するだけでは充分とはいえなくなりました。
製品購入後の所有期間に発生する様々な消費体験を通じて、消費者の満足度を高めようとしています。
このため購入した製品ブランドや企業に対するイメージ並びにロイヤルティを向上させるための「サービス・マーケティング」の強化が問われています。
更には、消費者からの強い支持を得て、企業に継続的な優位性と発展をもたらすために必要不可欠なのは、より包括的な「サービス・マネジメント」を組織的な活動として充実させ、定着させるかに掛かっていると言っても過言ではありません。

この研究の目的は、こうした社会環境の大きな変化の潮流に呼応するべく、消費者並びに企業の双方にとって極めて身近な問題であり、かつ不可避の要素とも言える購買体験及び消費体験プロセスにおける「待ち時間」に焦点を当てています。
消費者視点での待ち時間に対する受け止めや、待ち時間が消費者満足・不満足へ与える影響等、相互の関係性を究明すると共に、待ち時間の存在がネガティブな要素としてばかりではなく、消費者の期待値や満足度を高めるような「プラスの効用」に転化する可能性についても実証的に見極めようとしています。更に、待ち時間を軸とした新しいマーケティングの切り口を提案することにあります。

商品カテゴリーの分類方法

具体的な研究を進めるにあたっては、各々の消費者が日常生活の中で持っている価値観やライフスタイル、並びに様々な待ち時間に対して消費者が抱く意識や感情、享受する価値等により、許容出来る待ち時間の限度及び満足・不満足の感じ方が変わるのではないかという仮説を立てました。そして、計1,233名に対するインターネット調査を行い、実証的に分析並びに考察を行ないました。その結果は、以下及び図1の通り整理されます。


①各個人が持っている価値観やマインドセット、日常生活におけるライフスタイルの中
で、購買行動や消費行動を通じて自分が享受する価値にこだわり、また費やす時間に
対するコスト意識を強く持っている消費者層ほど時間感覚には鋭敏であり、無意味な
時間に対する拒否反応が強い。

②自分が得る価値にこだわる消費者層は、自分が許容出来る待ち時間に対しても明確な
基準を持ち、絶対に買い物に失敗したくないという意識が働くような場合には、応分
の時間とコストを費やしても慎重に選ぼうとする傾向がある。
一方で、簡単かつ廉価で購入・消費出来るような場合には、
許容出来る待ち時間が短くなる。

③消費者は、購入または消費しようとする製品やサービスの種類に応じて、様々な価値
観や視点に基づき許容出来る待ち時間を捉えている。
消費者自身が楽しいと感じたり、好きなもの、夢実現に繋がること、
新規性や流行に関連すること、特別感や優越感を感じることが出来る待ち時間に対しては
許容限度が長くなる。

④待ち時間が予め想定したよりも長くなった場合における満足度の低下は、
反対に短くなった場合における満足度の向上よりも有意に変化する。
一方で、消費者が待ち時間に対して、信頼性、特別感、優越感等の希少性を認める
場合には、たとえその待ち時間が長くなったとしても消費者の満足度は向上する。 

図:ロシター・パーシー・グリッド
注)上図における破線の矢印は、5%水準にて有意で無いことを示す。
従来の待ち時間の研究は、待ち時間をいかに短縮するか、または待ち時間を短く感じさせるソフトやハード面での工夫に力点が置かれていました。この研究においては、消費者の特性や待ち時間の種類により、待てる限界に有意差が認められました。また、待ち時間の種類によっては、消費者が待つこと自体を楽しんだり、または待ち時間が延びたとしても満足度が向上したりすることもあり得ることが明らかになりました。このことは学術的にも有意義な発見であったと言えます。一方で、時間という概念については、これまで多くの実務家や研究者が解明を試みている極めて深遠なテーマであり、依然として謎が多い領域です。従って、この研究も限られた条件の下で、その一端を分析したに留まっています。

仮説

この研究における消費者と待ち時間、並びに企業との関係を概念図にまとめると、図2の通りに表すことが出来きます。
各企業が「待ち時間のマーケティング」のアプローチとして、今直ぐにでも取り組むべきことは、以下の3つであると考えます。

①継続して無駄な待ち時間を排除する

②不可避な待ち時間があれば、それを消費者にとって有益な情報提供の場として活用する。

③待ち時間の順序にも工夫を凝らし、消費者への苦痛感軽減と好印象の付与を工夫する。
図:ロシター・パーシー・グリッド
出所:本研究テーマに基づき筆者作成。

「待ち時間」は、企業が顧客と交わす基本的かつ重要な約束事の一つです。
しかし、単なる物理的時間または心理的時間としての「長い・短い」だけではなく、その「順序と納得性」についても充分に考慮した上で、消費者の興味と満足度を向上させる手段に転じていくことが、今後の重要なマーケティング課題です。
また、消費者の購買体験及び消費体験の全てのプロセスを通じて「サービス・マネジメント」を実践すべきと考えます。 



    

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