2011 年度 大学院生支援プログラムより (1)|『大学院生調査研究レポート』

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大学院生支援プログラム

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2012.04.09|2011年度 |

2011 年度 大学院生支援プログラムより (1)

今回の大学院生支援プログラムでは「震災特別枠」というものを設定いたしました。通常の大学院生支援とは別に、被災した地域にある大学の大学院生を支援するというものです。ここでは東北大学大学院の「311 プロジェクト」の皆さんの研究成果をご紹介します。




執筆:東北大学文学研究科 行動科学研究室 311 プロジェクトの皆さん

吉良さん・稲垣さん・大林さん・塩谷さん・鈴木さん・古里さん




「絆」や「助け合い」を研究する

東日本大震災後、日本人の「絆」や「助け合い」は世界中の注目を集めました。被災地の中では、生活物資が不足する中で互いに助け合い、精神的に励まし合いました。被災地の外からは、多くの人が災害ボランティアに参加し、被災地へ募金や寄付を送りました。また、震災によって電力不足が発生する中では、多くの人が節電に協力しました。

私たちの研究の目的は、この震災後の「絆」や「助け合い」を社会学的な立場から分析することです。社会学という学問分野では、災害時に限らない「助け合い」全般について、多くの研究が行われています。私たちは、震災後の助け合いがなぜ起きたのか、そしてそれらがどのような結果をもたらしたか、ということに強い関心を持ちました。このことを明らかにするため、震災時と 2011年 9 月 11 日の両時点で宮城県内にお住まいだった 1,000 人の方々に対し、震災後の助け合いに関するインターネット調査を実施させて頂きました。

私たちのうち何人かは、仙台市内の大学内で実際に震災を経験しました。仙台の内陸部では、津波などの被害は受けなかったものの、ライフラインの停止や生活用品の不足が起きました。その中では、普段では考えられないような助け合いが行われました。例えば、生活用品を買うための列に我慢強く並んだり、食べ物や水を分け合ったり、知り合いや近所の人を自宅に泊めてあげたり、といったものです。私たちは、震災直後の「助け合い」を目の当たりにし、実際に手助けを受け、他の人に手助けしました。この経験を学術研究に生かしたいという気持ちが、今回の調査・研究の動機になっています。


 

5つのサブテーマについて

今回の調査では、同じ研究室に所属する大学院生・ポスドク研究員が質問項目の希望を出し合い、5 つのサブテーマを分析しました。ここでは、それぞれのサブテーマについて研究を紹介したいと思います。




見ず知らずの人への援助に対する人間関係の影響(大林さん)

東日本大震災直後には、自分の身近な人とだけでなく、見ず知らずの人とも助け合って困難を乗り越えていくという行動が見られました。では、どのような人が、見ず知らずの人への援助を行っていたのでしょうか?私はこのことについて、データを用いて分析をしました。

これまでの研究では、日常的に交流し、将来もそうする可能性の高い近所の人々との密な関係の中では、援助が行われやすいが、それ以外の人には広がりにくいとされています。一方で、NPO やボランティア団体を通じた疎な人間関係は、それ以外の人へと援助を促しやすいとされています。

 

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そこで、震災前の近所の人との関係の親密さと NPO やボランティア団体での活動頻度が、震災後 1 か月間の見ず知らずの人への援助に与える影響を分析しました。このときの援助とは、人に対して、水や食料を分けてあげたり、精神的に励ましたりするなどの行為を全て含んでおり、限定はしていません。また分析に際して、事前の備えや居住家屋の損壊の程度などの影響を取り除く処理を行っています。

すると、近所の人々と親密であるほど、また NPO で活動しているほど、見ず知らずの人に援助していることがわかりました。 NPO での活動に関しては予測通りでしたが、近所との関係はそうではありませんでした。近所での密な関係は、見ず知らずの人への援助を阻害するのではなく、促進する基盤になっていると考えられます。




被災者は誰から支援を受けていたのか?(鈴木さん)

震災後に手助けをしてもらう「つて」には、さまざまなものがありました。町内会や自治会を通した地域内の絆、つまり地域のつながりの強さは、多くのメディアを通して評価されました。その一方で、被災者自身の個人的な人間関係によって支援を受ける場面も、多く見られました。それでは、このような支援は、地域内の絆と個人的な人間関係のどちらによって得られたのでしょうか。それとも両者から、支援が得られたのでしょうか。

そこで私は、震災時において、被災者が誰からどのような支援を受けていたのかについて、分析を行いました。

まず、1. ふたつの タイプの支援(震災後 1 か月間):1-1. 「精神的な励まし」(3 項目)などを情緒的支援の受領としてまとめました。1-2. 「食料・水などの物資」(5 項目)などを道具的支援の受領としてまとめました。

次に、2. 人間関係の親しさ(震災前):2-1. 学校・職場の同僚、2-2. 近隣、2-3. それ以外の友人知人との「悩み相談の有無」(4 項目)などの多さをまとめました。

3. 交流頻度(震災後1か月間):3-1.学校・職場の同僚、3-2.既知の近隣、3-3.それ以外の友人知人、3-4.震災後に知り合った近隣と「全く会っていない」~「ほぼ毎日会った」(6 段階)を使用しました。

4. 地域の交流活動(震災前):「交流行事」(10 項目)など「わからない」~「よくしていた」(5 段階)をまとめました。なお、どのくらい多くの支援を受けるかについては、年齢・性別・職業・被災状況・備蓄の量によっても影響をうけるため、これらの要因の影響を取り除いて統計的に分析しました。

分析の結果は次の二つです。まず、同僚・近隣・友人知人と親しいほど、震災後に知り合った近隣と多く交流するほど、被災者は情緒的支援を多く受けていました。次に、同僚と親しいほど、既知の近隣・友人知人・震災後に知り合った近隣と多く交流するほど、交流活動の盛んな地域ほど、被災者は道具的支援を多く受けていました。

 

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以上の結果から、震災時には、親しい人から情緒的支援を受けていた一方、近隣や友人知人などの同じ被災者との交流から道具的支援を受けていたことが示唆されます。したがって、災害時の支援獲得には、地域内の絆だけでなく個人的な人間関係の強さも必要です。このように、日ごろから身近な人たちとも近所の人たちとも交流を深めていくことが、いざという時に重要になるといえるでしょう。




人々の絆は地域の復旧を促したのか?(稲垣さん)

私は、震災からの復旧・復興に対して、地域コミュニティの「絆」は効果的に働いたのかどうか、ということについて分析を行いました。「絆」という言葉と似た意味を持つ概念として「ソーシャル・キャピタル」というものがあります。このソーシャル・キャピタルとは、人への信頼感や、助け合いの規範、社会ネットワークなどの総称で、人々の結束や協調行動を促進する効果を持つと言われています。これまでの研究でソーシャル・キャピタルの保有量が多い地域では、地域的な安定性が高まることがわかっています。ここから、ソーシャル・キャピタルの豊富な地域では、震災からの復旧も早かったのではないかということが推測されます。

以上の事柄を検証するため分析を行いました。対象者は宮城県の仙台市に住んでいる434名の方でした。はじめに、地域のソーシャル・キャピタルの効果を比較するため対象者の方を、仙台市の連合町内会の区分に従い 51 の地点へと振り分けました。そして、マルチレベル分析という方法を使い、「地域の雰囲気が、震災以前の水準に戻るまでにかかった日数(復旧日数)」と、ソーシャル・キャピタルの測定指標として用いられることの多い「信頼感」の地域平均との関係を調べました(ここでは同時に、インフラの被害程度や、対象者の方の収入や学歴などから受ける余計な影響を取り除く操作を行っています)。

分析からは、信頼感の高い地域に住む人ほど、復旧日数を短く答えるという傾向があることがわかりました(この傾向は偶然に現れるような確率が低く、統計学的に信用しても良いと言えるものでした)。この結果は、ソーシャル・キャピタルの豊かな地域では、震災後の住民同士の助け合いが活発に行われたことにより、復旧が早まったことを示唆するものです。やはり地域の復旧に「絆」は重要な役割を果たしていたようです。

 

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被災者のメンタルヘルスに対する助け合いの効果(塩谷さん)

東日本大震災後に多くの手助けや励ましが行われたことは、これまで述べたとおりです。では、このような支援は、被災者の精神的な健康状態(メンタルヘルス)にどのような影響を及ぼすのでしょうか。私の研究の目的は、震災直後の困難な状況で他の人から支援を受けたことが、半年後のメンタルヘルスに及ぼす影響を明らかにすることでした。この研究によって、より望ましい被災者支援の方法を知ることができます。

受け取った支援の具体例として「水や食料、燃料などの物資を分けてもらった」、「スーパーマーケットやガソリンスタンドなどの情報を教えてもらった」、「精神的にはげましてもらった」の 3 つに着目しました。メンタルヘルスの一例として、抑うつ傾向(震災から半年後のうつ状態)に着目しました。「居住家屋の損壊の程度」、「家族の死などの辛い経験」、「過去の抑うつ傾向(震災直後の状態)」などの影響を取り除いた分析を行いました。

結果は意外なものでした。予想に反して「精神的にはげましてもらった被災者ほど、抑うつ傾向を持ちやすい(欝になりやすい)」という結果が得られました(その他の支援は抑うつ傾向とは関連しませんでした)。

 

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この理由として、「精神的なはげまし」を受けた被災者は、自分が相手から「哀れな被災者」であると決めつけられたと感じてしまい、これがメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性が考えられます。被災者を安易に励ますことは避けたほうがよいようです。




「みんながやってる」と思う人ほど節電する?(吉良さん)

震災の後には「節電の夏」が待っていました。震災の影響によって、多くの発電所が停止したためです。大々的に節電が呼びかけられ、政府による電力使用制限令も発令されました。特に職場や学校では、この制限令によって、厳しく電気使用量が管理されました。結果として多くの人が節電に協力し、電力消費量は大きく抑えられました。

では、特に積極的に節電へ協力していた人は、どのような人だったのでしょうか。回帰分析という統計分析の結果、次のようなことがわかりました。それは、「みんなが節電を行っている」と考えている人ほど節電をする、ということです。そしてこの傾向は、職場や学校での人付き合いの無い人ほど顕著でした。

 

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上の図は、節電実行数(節電への協力の度合い)と、他者協力認知(「東北地方全体で何割くらいの人が節電に協力していると思いますか?」への回答)の関係を見ています。節電実行数は、「エアコンをなるべく使わない」「エアコンの設定温度を上げる」「照明をこまめに消す」「照明の強さを落とす」「テレビの主電源を切る」のうち何個を実行しているかを意味します。また赤い実線と青い点線はそれぞれ、職場や学校の人と挨拶や世間話を交わす人と、そのようなつきあいが無い人の平均節電実行数を意味します。

これを見ると、「多くの人が節電に協力をしている」と思っている人は、付き合いのあるなしに関わらず、節電へ積極的に協力しています。一方、他者協力認知が低い人、つまり「節電に協力している人は少ない」と思っている人は、あまり節電をしないことが分かります。例えば、ほとんど誰も節電に協力していない(他者協力認知=0)と思っている人は、職場や学校での付き合いが無かった場合、平均して1項目しか節電に協力していません。ただしこの傾向は、職場や学校での付き合いがあるかどうかで、大きく異なります。付き合いがあった場合、ほとんど誰も節電に協力していないと思っていても、平均して 2.6 項目を実行しています。

なぜ、このような結果になったのでしょうか? 一つの理由として考えられることは、人間には「他の人と同じことをやりたい」と考える性質があることです。このことを社会学や心理学では「同調行動」と呼ばれます。同調行動が見られたとすれば、「節電をしている人が少ないなら、自分もしなくていいや」と考える人がいた、ということになります。それと同時に、職場や学校で節電への協力を強く呼びかけられていた人は、このような気持ちが起こりにくかったと考えられます。




終わりに

今回の調査から、「絆」や「助け合い」に関して、さまざまな結果を得ることができました。これらの中には、今までの研究の結果を支持するものや、予想とは逆のものがあります。今後は、これらの結果が社会学の研究に対してどのような意味を持つのか、さらに深く考えていきたいと思います。



    

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