企業の社会貢献って、どうなの?~2014年度大学院生支援プログラムより(2)|『大学院生調査研究レポート』

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大学院生支援プログラム

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2015.04.21|2014年度 |

企業の社会貢献って、どうなの?~2014年度大学院生支援プログラムより(2)

大学院生支援の第二弾は、前回同様企業の社会貢献についての研究です。

今回は、一般の方々が企業の社会貢献活動に対して【本音】の部分でどう思っているのか?という研究成果です。

  多くの企業が社会貢献活動を行っていますが、一般の方々から見た時に、それは

  「なんだかわざとらしい」とか「ぴんとこない」という印象をもたれるのか?

  それとも「いいことしてるなぁ」と共感してもらえるのか?

  そのような印象が生まれるのは何故なんでしょうか?

  どうぞ研究成果をお楽しみください。

                                         

企業が社会的責任を果たすことは偽善的か?:消費者の目から見た企業の社会貢献活動について

:名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻心理学講座  木村 祥子

                                       

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■研究内容

企業の社会的責任(corporate social responsibility:以下CSR)に関する情報が,消費者の企業に対する評価や購買意図に与える影響について検討する。

                                

■実施した調査

20~60代の社会人を対象に、インターネットによる調査を実施した。有効回答761名。

                              

■研究結果

                                                    

CSR情報が消費者の判断に与える影響について

→善いことをしているからといって、消費者が「なんて善い企業なのだ!ここの製品を買おう!」と思うとは限らない

                                                                                                                       

CSR活動とは一般的に望ましく,道徳的に正しい活動である(例えば,被災地支援や環境保全活動など)。このCSRの目的は多様なステークホルダーと良好な関係を築くことだけでなく、同時に企業イメージの向上も含まれている(Kotler & Keller, 2006)。しかし,人間には他者の行動動機は利己的である、と素朴に捉える傾向が内在している。このような歪んだ認知傾向は、CSRを行っている企業に対しても作用することが、今回の調査結果から示された。以下にその詳細を記していく。

                                        

【事業領域との適合性】

人は、他者の行動とその背景にある本心が乖離していると判断する(本音と建前を感じとる)と、その他者を偽善的である、道徳的に正しくないと認識することがこれまでの研究から示されている。そこで、本研究では架空の企業に関する2つのシナリオを用いて、企業の行動と本心の乖離度を操作した*。

  ①乖離_低:CSR活動の内容が、企業の事業内容に関連している

  ②乖離_高:CSR活動の内容が、企業の事業内容に関連していない

各群のCSR活動に対する道徳性評定値について、t検定を行った結果、乖離_低群と乖離_高群の間に有意差が見られた(t(759)=3.37, p<0.01)。すなわち、道徳的に正しい活動に取り組んでいても、その活動が企業の事業内容と食い違っていると、道徳的に正しいとは判断されにくいことが示された。

また、CSR活動の背景にある、企業の意図に対する道徳性評定値についてもt検定を行ったところ、同様の傾向が見られた(t(759)=1.92, p<0.1)。すなわち、CSR活動の内容が、事業と一致していない場合、企業の本心の道徳性は割り引かれて判断されることが示された。

*企業という集団に対して、本音や本心という表現をすることに対して違和感を覚えるかもしれない。しかし、人は集団に対しても、1人の人間に対するときと同様の情報処理をすると、心理学領域ではいわれている。

                                                  

【購買意図】

シナリオに登場した企業の製品に対する、購買意図の比較検討を行った。その結果、企業のCSR活動に関する情報を与えられると、その活動内容が事業と一致している、していないに関わらず購買意図が減少することが示された(乖離_低:t(373)=2.62, p<0.01/乖離_高:t(386)=4.78, p<0.01)。すなわち、企業が行っているCSR活動の情報を得ると、その企業の製品を「買いたい」という気持ちが減少することが示唆された。

                                                   

【企業に対する印象】

企業が行っているCSR活動について、情報を得ることが企業に対する印象にどのような影響を及ぼすのかを検証した。その結果、CSR活動が事業内容と不一致の場合(乖離_高群)、CSR情報を与えられると、その企業に対する印象が低下することが示された(t(386)=4.61, p<0.01)。すなわち、善い行いに関する情報を与えられたからといって、その企業に対する印象が単純には向上しないことが示唆された。

                                      

■考察

今回の調査から、企業のCSR活動に関する情報が、消費者に与える影響について以下の2点が示唆された。

  ① CSR活動に関する情報は、企業の事業内容との適合性があるか否かで、消費者に異なる影響を及ぼす

  ② CSR活動に関する情報は、消費者の購買意図を減退させる可能性がある

たとえ企業が社会的に望ましい活動をしていても、消費者は企業の本音と建前が乖離していると判断すると、その企業に対する印象を割り引くことが今回の結果から考えられる。加えて、CSR活動と事業内容が一致していても、消費者の購買意図は低下してしまう。これらから懸念される問題として、企業が発行しているCSRレポートなどが消費者の目に触れると、企業評価や購買意図が善行をしているのにも関わらず、かえって減退してしまう恐れがあることである。

また、CSRレポートに限らず、企業の中には店内に募金箱を設置するなど、自社の社会貢献活動に関する情報を消費者に与えてしまっている可能性がある。購買意図や企業評価を低下させない情報開示の方法を模索することが必要と考えられるが、今回はあくまで質問紙調査であり、行動指標はとっていない。実際の購買行動に、CSR情報がどこまで影響を及ぼすのか、今後さらなる検討が必要である。



    

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