スタートの合図とともに50人ほどが一斉に飛び出しました。
レースのペースなんて全然わかりません。
とりあえず前を走る人に置いていかれない程度のスピードで走ります。
しばらくすると少し道幅の狭い山道に入りますが、しばらくは傾斜の緩やかな道が続くことが下見で分かっており、気持ちはちょっと余裕。
などと思っていますと、突然、ゴォー・・・という音と共に、後発グループの先頭集団が追いついてきました。
恐ろしーい!怖いー!道の端に寄って通過を待ちます。
この先、激坂が待っていることを知っている私は我慢がまんです。
「ここでつられてペース上げて体力使い果たしちゃったら最後まで上りきれないからね」
「とにかく完走だけはしないとね」
などと焦る気持ちを抑えつつ、徐々に斜度が上がっていく道をあまり心拍数があがらない程度にぺダルを踏み続けました。
さあ、下見した鳥居が見えてきました。この先にはあの激坂が待っているのです。
ギアを一番軽いところに入れて、いよいよここからが本番です。
見上げると、もう坂の途中をよろめきながらゆるゆると上っている人たちの集団が団子状態になっています。不安を胸に、おっかなびっくり坂に突入しました。
ところがです、いままで体力を温存しておいたのが良かったのか、意外と楽に坂を登っていきます。
あっという間に前を走っていた何人かに追いつきました。
よろよろしている人が倒れ掛かってきそうで怖かったのですが、「すいません、横通ります!」と声をかけてパス。あらら抜いちゃった。
というような感じで、その後も坂がきつくなると前の人に追いつき追い越し、気がつけば下見のときの休憩ポイントも難なく通り過ぎていました。
レースで前走者を追い抜く優越感を体験。「気持ちいいー!」
レースは後半の林間コースに入り、さすがに疲れが出て、頭がくらくらしてきました。
駐車場に車を留めに行ったW氏はスタートに間に合ったのだろうか、とか、あー朝ごはん食べ損ねたんだよなーなんてことを思いだし、「いい歳してこんなレースに参加して、倒れて怪我でもしたら笑いもんだよなー」「休憩しちゃおうかなー」なんて軟弱な考えが頭の中をぐるぐるし始めました。
「でも一度止っちゃったら後がもっと辛い。あと少しだけ、あと少しだけ」と自らを鼓舞しながら、ゆるゆると自転車を前に、上に駆り続けたのです。
このあたりのコースは、先の見えないカーブが続き、行けどもいけどもひたすら同じ景色が現れます。
この先がゴールだっけ、あー違った、今度こそ、えーぇまだ~・・・・という状況で走っていると、頭上から「ラストスパート!!」の声が聞こえてきました。
やっとゴール、フィニッシュです。ラストスパートも何もかけられませんでした。
下見のときはとても上りきれると思えなかったのですが、本番レースの雰囲気の中にいると、思わぬ力が出てしまうのでしょうか。自分でもびっくりでした。
程なくしてW氏も無事ゴールしました。
ゴール地点では地元の人が振舞ってくれた、「こんにゃくの煮物」 の食べ放題、すきっ腹においしかったです。ホントに生きた心地です。
ところで、マウンテンバイクの部でエントリーしたN君の姿が見当たりません。ゴール地点はけっこう狭くて、レースに参加した人たちやスタッフでごった返していたので、見つけられないだけかと思っていました。
そのとき、ゴール付近で一際高い歓声があがり、見るとN君が自転車を押して走り込んでくるところでした。
いったい何が?・・・・なんと彼の自転車には片方ペダルが ありません。
朝、輪行のために外したペダルが組み立て時にきちんとはまっていなかったらしく、レースの最中にペダルのねじ山が擦り切れて取れてしまったらしいのです。
スカッと足が外れたので、靴がビンディングから外れたのかと思ったら、靴の裏にペダルがくっついていたとか。
しかし、あの激坂を自転車を押して走ったみたいです、さすが熱い男。
(2km近く走ったようです。バイクレースではなくマラソン?)
仲間3人の無事?完走を、こんにゃくをたべながら祝福し、健闘を讃えあいました。
さて、おなかも落ち着いたところで、結果が張り出されているから見に行きましょうと言われ、順位を確認しに行きました。
発表・・・・・「えー!!レディース部門5位入賞?!」・・・・本人が一番びっくりです。
(もともと女性は参加人数が少ないんですけどね)
考えてみれば、レースに参加できたこと自体が奇跡みたいなもので、仲間の協力、支援なくしてはありえなかったヒルクライム・レースの結果でした。
本当にほんとうに、感謝・・・感謝でした。
激坂の下りは本当に怖かったです。前傾姿勢のままブレーキをかけ続け、腕がつりそうでした。
しかも半分下ったあたりで、なんと2度目のパンクに見舞われ、結局N君が収容されていたサポートカーにわたしも拾われて下山というおまけ付きでした。
そして、W氏はというと、実はレーススタートに間に合わず、参加はしたものの結果は参考値になってしまいました。(ごめんなさい、Wさん)
下山後、W氏はてきぱきと2度目のパンク修理をしてくださいました。最後までお手数かけてすいません。(とほほ・・・)
このように、波乱万丈ハプニングてんこ盛りの初めてのレースは幕を閉じたのでした。
大人になってこんなに楽しくていいのだろうかと、考えてしまうほど充実の一日でした。
初心者でもこんなに楽しめてしまうヒルクライム。
もし、これから自転車イベントに参加してみたいと考えている方、「ヒルクライム」お薦めします。